DXの次はAX? 工務店が知っておきたいAI時代の新しい業務変革

DXの次はAX? 工務店が知っておきたいAI時代の新しい業務変革
DXの次はAX? 工務店が知っておきたいAI時代の新しい業務変革

DXの次はAX? 工務店が知っておきたいAI時代の新しい業務変革

「DXは知っているけれど、AXという言葉は初めて聞いた」そんな方も多いのではないでしょうか。AXとは「AI Transformation(AIトランスフォーメーション)」の略として使われる言葉です。DX(デジタルトランスフォーメーション)がデジタル技術やデータを活用して業務やビジネスを変革していく考え方であるのに対して、AXはAIを活用して、業務そのものや組織、プロセス、製品・サービス、ビジネスモデルなどを変革していく考え方です。生成AIの急速な進化によって、AIは「一部の仕事を効率化する便利なツール」から、「仕事の進め方そのものを変える存在」になろうとしています。そして今、このAXという考え方は、国の政策でも重要なキーワードになり始めています。今回は、DXとAXは何が違うのか。そして工務店や住宅会社にとってAXとは何を意味するのか、わかりやすく解説します。

国も「AX」を重要なテーマに

AXは、DXほど以前から広く知られてきた言葉ではありません。しかし、生成AIの急速な普及を背景に、AIを単なるITツールとして利用するのではなく、AIを前提として企業や社会の仕組みそのものを変えていこうという動きが広がっています。日本でも2026年に入り、経済産業省は「中小企業のAX(AI Transformation)の促進」を打ち出しています。特に中小企業については、意思決定の速さや、現場で培われてきた知見が豊富に存在することなどから、AXによって事業を大きく変革する可能性があるとしています。また、2026年7月に閣議決定された「人工知能基本計画」でも、AIを前提として意思決定や業務の進め方を根底から見直す「AIトランスフォーメーション(AX)」の推進が掲げられています。つまりAXは、単なるIT業界の新しい流行語ではなく、日本の産業や企業のこれからを考えるうえでも重要なキーワードになりつつあるのです。なお、人工知能基本計画については、別の記事で詳しく解説します。

そもそもDXとは何だったのか?

AXを理解するために、まずDXについて振り返ってみましょう。工務店のDXというと、

  • 紙の工程表をクラウド化する
  • 電話やFAXでの連絡をチャットに変える
  • 見積書や発注書を電子化する
  • 現場写真をクラウドで共有する
  • 顧客や案件の情報をシステムで一元管理する

といった取り組みをイメージするかもしれません。もちろん、これらもDXに向けた重要な取り組みです。しかし、本来のDXは単に「紙をデジタルにすること」ではありません。例えば、現場写真を紙で管理していた状態から、パソコンのフォルダに保存するようになっただけであれば、「デジタル化」の側面が強いでしょう。一方、クラウド上で案件、工程、図面、写真、協力会社などの情報がつながり、現場監督だけでなく、営業、設計、経営者なども必要な情報を共有できるようになれば、仕事の進め方そのものが変わります。DXが目指しているのは、デジタル技術による「変革」なのです。

では、AXとは何か?

AXも同じように、「AIを導入すること」そのものを意味するわけではありません。例えば、生成AIに、「このメールを作ってください」「この文章を要約してください」「この議事録をまとめてください」と指示するだけでも、仕事はかなり効率化できます。しかし、これは既存の仕事をAIによって速くしている段階ともいえます。AXが目指すのは、その先です。例えば工事の進捗報告を考えてみましょう。現在は担当者が現場写真を確認し、工程を確認し、必要な情報を集めて報告書を作成しているかもしれません。将来、AIが案件情報や工程、現場写真など必要な情報を参照できるようになれば、「現在どこまで工事が進んでいるのか」「予定していた工程との差はあるのか」「施主に伝えるべき内容は何か」などを整理し、報告内容の案まで作成することも考えられます。人間はゼロから情報を探して文章を作るのではなく、AIが整理した情報を確認し、判断し、必要に応じて修正する。仕事の流れそのものが変わります。これがAXの重要なポイントです。

「AIを使う」と「AIを前提にする」は違う

AXを理解するうえで、もう一つ重要なのが、「AIを使う会社」と「AIを前提に仕事を設計する会社」は違うということです。例えば会議の議事録を考えてみましょう。会議終了後、担当者が生成AIを開き、文字起こしデータを入力して議事録を作成する。これも立派なAI活用です。しかし、会議が終了すると文字起こしデータが保存され、AIが議事録案を作成し、人間が内容を確認して承認するところまで業務の流れとして設計されていればどうでしょうか。もはや「AIを使う」というより、最初から「AIがいることを前提に業務が設計されている」状態です。AXが進むことで、このような仕事の形がさまざまな業務に広がっていくと考えられます。

DXとAXは対立するものではない

では、これからAXが進むと、DXは必要なくなるのでしょうか。そうではありません。むしろ、AXが進むほどDXの重要性は高まると考えられます。例えば、ある工務店で、顧客情報は紙、見積はExcel、工程はホワイトボード、現場写真は担当者のスマートフォン、過去案件は社内の共有フォルダ、というように情報が分散していたとします。この状態で高性能なAIを導入しても、AIが参照できる情報は限られます。一方、DXによって顧客、商談、見積、実行予算、工程、図面、現場写真などがデータとして蓄積され、相互に関連付けられていればどうでしょうか。AIが活用できる情報は大きく増えていきます。つまり、「DXがAIのための土台をつくり、その土台の上でAXを進める」と考えることができます。

SaaSに蓄積されたデータがAXの土台になる

ここで重要になるのが、工務店や住宅会社がこれまでDXによって蓄積してきたデータです。住宅業界向けのSaaSには、

  • 顧客情報
  • 商談履歴
  • 見積
  • 実行予算・原価
  • 図面・CADデータ
  • 工程
  • 現場写真
  • 検査記録
  • 発注情報
  • アフター履歴

など、さまざまな情報が蓄積されています。例えば、ダイテックの注文分譲クラウドDX現場Plusをはじめとする住宅・建設業向けのクラウドサービスも、営業から工事まで、それぞれの業務で発生する情報をデジタルで管理・共有するための仕組みです。これまでは、こうした情報を「人が入力し、人が検索して確認する」ことが中心でした。しかしAI時代には、このデータの意味が変わってきます。蓄積されたデータをAIが必要に応じて参照し、整理・要約・分析できるようになれば、人の業務や意思決定を支援することが可能になります。例えば、過去の類似案件を探したり、工事の進捗状況をまとめたり、蓄積された情報から経営上の気づきを提示したりすることも考えられます。つまり、これまでDXによって蓄積してきたデータは、AX時代には「AIが働くための重要な材料」になっていくのです。

AX時代でもSaaSは必要なのか?

生成AIの急速な進化によって、「将来はSaaSがAIに置き換わるのではないか」という議論もあります。しかし、工務店や住宅会社の業務を考えると、AIだけですべてを完結させるのは簡単ではありません。実行予算や原価、契約、発注、工程などの業務では、正確なデータ管理や決められた業務プロセスが必要です。また、「誰がどの情報を見ることができるのか」「誰が承認できるのか」「どのタイミングで次の処理に進むのか」といった権限管理や業務ルールも欠かせません。AIが柔軟な生成や分析を得意とする一方、SaaSはデータを構造化して蓄積し、決められたルールに沿って業務を動かすことを得意としています。そのためAX時代には、「AIかSaaSか」ではなく、「SaaSとAIをどう組み合わせるか」という視点が重要になっていくでしょう。

DXで蓄積したものが、AI時代の競争力になる

これまで工務店や住宅会社がDXに取り組んできた大きな目的の一つは、業務効率化でした。しかしAXという視点で見ると、DXにはもう一つ大きな意味があります。それは、「自社のデータを蓄積してきたこと」です。顧客との商談履歴、見積、図面、原価、工程、現場写真、検査記録、アフター履歴。こうした情報には、その会社が長年培ってきた経験やノウハウが含まれています。生成AIそのものは、多くの企業が利用できます。しかし、それぞれの会社が持つ顧客情報や案件情報、現場で蓄積してきたデータは、その会社固有のものです。AIの性能だけでなく、「AIにどのようなデータを与えられるか」が重要になる時代には、これまでDXによって蓄積してきたデータそのものが企業の競争力になっていく可能性があります。

AXは「DXの次」ではなく「DXの上」にある

「DXの次はAX」と聞くと、DXが終わり、これからAXという新しい取り組みに切り替わるように感じるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。DXによって業務をデジタル化する。情報をつなぐ。データを蓄積する。そして、そのデータやデジタル基盤の上でAIが働き、人間とAIの役割分担を見直し、仕事の進め方そのものを変えていく。この関係を考えると、「AXはDXの次というより、DXの上にある」と考えた方がわかりやすいかもしれません。実際、国の政策でも「AX/DX」と両者を並べて推進する動きが見られます。これまで進めてきたDXは、AIの登場によって古くなるものではありません。むしろAI時代になったことで、デジタル化された業務、蓄積されたデータ、整備された業務プロセスの価値は、これまで以上に高まっていく可能性があります。これから工務店や住宅会社に求められるのは、単に「生成AIを導入するか」を考えることではありません。「自社がDXで築いてきた土台の上に、どのようにAIを組み込んでいくのか」この視点こそが、これからのAXを考える第一歩になるのではないでしょうか。

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